元自転車屋だった築 40 年の民家を改修し、高島における地域創生の場をつくるプロジェクトである。
近江高島で創業 70 年になる総合建設業の株式会社澤村と、京都のコーヒースタンドmamebaco を中心に、高島の地域資源を拾いあげ外とつなぎとめることで、移住や暮らしだけでない「働く」ことを起点とした場所や取り組みを目指している。
建物が元々持っていた固有性を取りこぼさず、ずっといたくなる / ぼーっとできる空間をつくるために、建物や地域の形式を読みかえること・地方における「あいまいさ」「不気味さ」をきっかけとして、痕跡やノスタルジーといった固有の質を異化させ、「違和感」として気づかせるような設計としている。
「違和感」は、私たちがこの場所で過ごすことを通して、再び高島の固有のアイデンティティとなる。その先にこの建築は、ぼんやりと私たちの経験や記憶に残り続けるはずだ。
カフェの立面は、道行く人の意識を引き込むため違和感をつくる印象的な存在とする一方で、奥のコワーキングスペースにも意識をつなげるため半透明のスクリーンとしている。
スクリーンは 1F は中空ポリカーボネート /2F はラワン合板にそれぞれ偏光シート貼とすることで、元々のマテリアリティが異化し別の物質性へと変容しつつ道路側 - 室内の広場に明るさを投影している。
スクリーンは見る方向によって色が変わり、入る光によっても刻々と変化し続けている。特定の色はイメージを押し付けてしまうが、色の変化は「移り変わる」という共有地をつくる。
そんな切りのない変化を眺めること - 波打つ水面や山にうつる光を眺めるよう - は、遠くの琵琶湖や比良山地の風景までも意識をつなげている。
そうやってぼーっと時間を過ごすことで、思わず電車を逃してしまう人も少なくない。
コワーキング・イベントスペースは東側のライブラリが立面となることで、広場のようながらんとした場所を生成している。そこに置かれる家具がそんな場所のふるまいを閉じない
ように、大きさの異なる三角形を組み合わせらるようした。三角形のさまざまな組み合わせは舞台のように場をつくり、机を動かす / 使う人がその場所を徐々に使いこなす。
天板は取り外して重ねることで、高さの組み合わせで遊ぶことができる。また脚は 3 種類の角材を組み合わせ、上部もつないだだけのものである。
机を並べると木々が並ぶようすとなり、スタックすると木の根際のみたいなかたまりとなる。
元々の大らかな空間は、この地域の街並みのような緩さをもっている。空間の質をつくるディテールがそんな地域性を置き去りにしてしまわないように、ディテールとつくりかたにおいて、できるだけゆるさを残している。
一方で、既存建物に対して上書き的に配置される要素おいては、それ自体が自立するものとして存在するように取り合いを検討し、ある種の緊張感が漂っている ( 既存のズレや不陸の影響もとても大きい )
建具を動かしたとき、変化する色を眺めたときにその緩急が、経験や感情に影響する。張り詰めた水面が波打つように。
道路側の吹き抜け上部には、空間の気積を生かして、高島ちぢみを利用した照明のようなものをつくった。地元の産業である高島ちぢみは肌着に使われることが多いが、その独特なマテリアリティを空間にも使えないか、という共創の実験である。
しかし、特徴であるシボ加工した布は光を吸収してしまうため、吹き抜けを暗くしてしまう。そこで地元の工房におじゃまし山のような在庫の中から使えそうな生地をリサーチするところから設計を始めた。その中で、シボ加工する前の生成の生地を発掘し、それを建築の要素と同列に扱い、反物のままおばけのように吊り下げた。それだけではまだ光を弱めてしまうため、布と布のあいだに透明ビニールを挟むことで、照明が反射し拡散している。その重なりは、高島ちぢみのサラッとした質感をヌメっとした印象に異化させている。
人間は重なりによってその背後を想像できるが、あいだに媒介するものがあるとき、向こう側をあいまいに感じる。それは、目の前の視点と別からの視点を想像している状態である。一方向でものごとを見ることが容易い現代において、私たちは複数の視点を持つことで、周辺と適切な距離感をつくることができる。
このファブリックにおいても、1F から 2F、2F から外へと距離感を調整する存在となっている。特に、物理的な建物の遠さと人の近さが混在する地方においては、このような複数の視点をもつこと - 関係性をつくることが大切だと考えている。
移り変わる色、反射する光、おばけのような布 ... それらは現象的であいまいな様相をつくっている。あるいは外に飛び出した半円の床や階段が不気味に鎮座する。そんな不気味さは、
既存の看板や柱 ( 元々着色されている )、外壁のタイルといった、ありふれた地方の風景へと意識を横すべりさせる。いつもこの前を通り過ぎる小学生は、そんな不気味な風景を毎日のように見ている。
いつかあったような存在として、記憶に残り続ける建築である。
Rin Takashima
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cafe , co-working space , office space
Takashima,Shiga , 2024
cafe , co-working space , office space
Takashima,Shiga , 2024
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Design:浦田友博 (浦田) + 株式会社澤村
Construction:株式会社澤村
Fabric:fabricscape
Neon:マヴァリック
Photo:大竹央祐
Construction:株式会社澤村
Fabric:fabricscape
Neon:マヴァリック
Photo:大竹央祐